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オンライン診療は今後どうなる?アフターコロナにおけるオンライン診療の需要

2020年新型コロナウイルス感染症の蔓延によって世の中は“非接触”がキーワードになり、医療の世界ではオンライン診療が急速に広がりを見せました。

非常に便利なオンライン診療ですが、まだまだ問題は山積みであり、現状は賛否両論があることも事実です。

そのためコロナ禍が明けた際に、診察が対面診察へ回帰するのか、オンライン診療が一定の地位を確立もしくは衰退するのかが注目されます。

 

この記事ではオンライン診療の現状とその抱える問題についてまとめています。

オンライン診療について

オンライン診療の歴史

日本におけるオンライン診療はその前身である「遠隔医療」として1997年に当時の厚生省によって認可されました。

当時は「離島・僻地の患者」、「特定の慢性疾患の患者」、「原則初診対面」という非常に厳しい前提条件があったことと、ビデオ会議システムどころかパソコンの普及率も低かったこともあり全く普及しませんでした。

 

しかし2015年になり突如厚生労働省より医療機関に対して、遠隔医療の適応条件について「医師の判断のもと、条件に当てはまらない患者に対しても利用を認める」旨の通知がなされたことで、オンライン診療は普及に向けて動き出しました。

さらに2018年3月の診療報酬改定で「オンライン診療」が保険収載され、医療機関でも取り入れを検討する施設が増加しました。

 

それでもご存じの通り2020年初頭までオンライン診療は導入している施設が増えはしたものの、利用は限定的にとどまっていました。

その理由はいろいろありますが、最も大きな障壁となっていたのは「初診は対面診察を原則とする」という条件でした。

つまり厚生労働省としては「安定している患者さんであれば、毎回は受診しないでもいいですよ」という、対面診察とセットの位置づけでの承認だったためです。

 

この流れに大きな変化をもたらしたのが2020年の新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックでした。

新型コロナウイルス感染症流行によって、医療機関への受診控えとそれによる国民の不利益が懸念されたため、2020年4月に厚生労働省より“時限的・特例的措置“という前置き付きではあるものの、オンライン診療による初診が解禁されたのです。

これにより、オンライン診療の利用は急速に増えたものの、1年後である2021年4月末の段階で全国の医療機関のうち、オンライン診療の利用が「初診から可能」と回答した医療機関は7156施設(6.45%)、「再診なら可能」と回答した医療機関も16843施設(15.2%)にとどまっています。(厚生労働省(2021)「第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会資料」参照)

この数は2020年4月から6月までの2か月間で急速に増加したあとは緩やかな増加に転じており、更なる普及には現在オンライン診療が直面している問題の解決が必要となります。

オンライン診療の適用条件

2021年11月現在オンライン診療を利用可能な適用対象については「オンライン診療の適切な実施に関する指針」内で示されており、中でも「最低限順守する事項」についての次の通りの記載があります。

 

ⅰ直接の対面診察と同等でないにしても、これに代替し得る程度の患者の心身の状態に関する有用な情報を、オンライン診療により得ること。

ⅱ 初診は、原則として直接の対面による診療を行うこと。

ⅲ 急病急変患者については、原則として直接の対面による診療を行うこと。なお、急病急変患者であっても、直接の対面による診療を行った後、患者の容態が安定した段階に至った際は、オンライン診療の適用を検討してもよい。

ⅳ ⅱ及びⅲの例外として、患者がすぐに適切な医療を受けられない状況にある場合などにおいて、患者のために速やかにオンライン診療による診療を行う必要性が認められるときは、オンライン診療を行う必要性・有効性とそのリスクを踏まえた上で、医師の判断の下、初診であってもオンライン診療を行うことは許容され得る。ただし、この場合であっても、オンライン診療の後に、原則、直接の対面診療を行うこと。

ⅴ 原則として、オンライン診療を行う全ての医師は、直接の対面診療を経た上でオンライン診療を行うこと。 ただし、在宅診療において在宅療養支援診療所が連携して地域で対応する仕組みが構築されている場合や複数の診療科の医師がチームで診療を行う場合などにおいて、特定の複数医師が関与することについて診療計画で明示しており、いずれかの医師が直接の対面診療を行っている場合は、全ての医師について直接の対面診療が行われていなくとも、これらの医師が交代でオンライン診療を行うこととして差し支えない。 また、オンライン診療を行う予定であった医師の病欠、勤務の変更などにより、診療計画において予定されていない代診医がオンライン診療を行わなければならない場合は、患者の同意を得たうえで、診療録記載を含む十分な引継ぎを行っていれば、実施することとして差し支えない。

 

この指針は文面通り受け取ると、依然としてオンライン診療の実施に巨大な壁が立ちはだかることとなりますが、現実的には多くの医療機関でⅳに記載された内容の“行間を読んで”、初診を含むオンライン診療を行っているのが現実です。

オンライン診療の資格

オンライン診療を行う医師は「オンライン診療の適切な実施に関する指針」において、研修の受講が求められていました。

しかし新型コロナウイルス感染症の蔓延に対応すべく、2021年4月10日に発表された「時限的・特例的な取扱い」が継続している間に限っては、研修未受講の医師がオンライン診療を行っても差し支えない、とされていました。

2021年4月以降については研修を受講することが必須となっています。

オンライン診療に用いるシステム

オンライン診療に用いられているツールとしては厚生労働省が公開した「オンライン診療に関するアンケート」において96%が専用のオンライン診療システムを使用しており、LINEやSkype、Facetime等の汎用システムが0.6%、自社開発ソフトの利用が3.4%であったとの回答がありました。

現状では多くの医療機関でオンライン診療専用システムが利用されているようです。

医師からみたオンライン診療の限界

実際にオンライン診療を医師として使用すると、様々な問題が露見してきます。

多くの方が感じている問題は次のようなものではないでしょうか。

 

  • 聴診、触診はできず、視診も通信環境によっては画質が荒く有用性が低いなど、実質問診のみでの対応となることが少なくない。
  • 定期的な血液検査等が必要で受診勧奨をしても、一度オンライン診療で処方薬が貰える簡便さを受領した患者さんはなかなか受診してもらえない。

 

つまりオンライン診療では診療のクオリティを維持するのが難しいのが現状のようです。

 

確かに高血圧症や脂質異常症で、同一処方によって何年も安定している方はオンライン診療の非常によい適応です。

しかし、皮膚科疾患や咽頭痛、めまいなど、医師からすると対面診察が必要と考える疾患であっても、患者サイドからすれば、安定した高血圧症や脂質異常症との区別が付きません。

 

かといって指針を順守して、対面診察を行いたい患者さん全てに受診勧奨をしていたのでは、オンライン診療の意義が少なくなってしまいます。

また、患者さんはオンラインで診察を完結してくれる医療機関を探す、新手の“ドクターショッピング”に至りかねません。

 

現状は“医師の判断“に裁量が与えられているため、厳格な医療を行おうとする医療機関ほど患者さんが離れてしまう状態のようです。

今後、国としてオンライン診療の適応の線引きを指針として提示するなどの対応が求められています。

経営者からみたオンライン診療

オンライン診療は点数が低い?

2021年11月現在診療所でのオンライン診療の診療報酬は概ね次の表で算定されます。

オンライン診療 対面診察
①. 初診料

②. 再診料

③. 外来管理加算

④. 特定疾患療養管理料

⑤. 明細書発行体制等加算

⑥. 処方箋料

214点

73点

147点

1点

68点

288点

73点

52点

225点

1点

68点

例えば咽頭痛で診療所を初診で受診した場合、検査等を抜きで考えると、診療報酬は①+⑥になるため従来の対面診察では356点なのに対して、オンライン診療では282点で算定されます。

つまり診療所の収入はオンライン診療の方が740円低くなります。1人あたりで740円ですが、1日10人、月の開院日が20日とすると144,000円、年間1,728,000円の減収になります。

更に定期通院の場合は、対面診察は②+③+④+⑤+⑥で419点、オンライン診療では289点であり、年間の減収は3,120,000円とその差はさらに広がります。

これはスタッフを一人雇えるレベルになります。

 

また来院であれば必要時の血液検査や尿検査、エコー等の検査への誘導によりさらなる点数の上乗せが可能ですがオンライン診療ではそれもできず、さらには機器や通信のトラブル等の発生が一定数起きる現状では1人あたりの診察時間が長くなる傾向があります。

これではコロナ禍で患者数が激減しているときならまだしも、ある程度対面診療で外来が埋まっている診療所においてはオンライン診療を導入する利点がないどころか、減収になってしまう可能性すらあります。

 

オンライン診療での集患でかかりつけ患者を増やせるか

 

オンライン診療が患者数の増加に寄与する可能性は次の2つです。

  1. 新規患者の獲得
  2. かかりつけ患者の満足度上昇、離脱の防止

新規患者の獲得

オンライン診療を行うことで、これまで診療所を訪れたことがなかった人のうち「通院するほどではないけど病院に行きたい」という方の需要を取り込むことができます。

新規開業で空き時間が多い診療所などでは、時間の有効活用になるうえ、周囲に競合が少なければ「地名+オンライン診療」の検索ワードで上位表示ができることで広告としての意味合いも持つため、一定の効果は期待できます。

かかりつけ患者の満足度上昇、離脱の防止

既に通院中の患者さんの中にも通院することが負担で、ふと来なくなってしまう患者さんがいます。

こうした患者さんも2回に1回はオンラインでもよい、となれば負担が軽減し通院離脱を防ぐことができる可能性があります。

オンライン診療のコスト

オンライン診療を行う上で目に見えるコストとして、システムの導入・維持費用、電子決済利用による手数料、設備費があります。

システムの導入・維持費用

提供する会社によってまちまちです。初期費用は0円が多く、月額料金は0~数万円、月額0円のものでは患者決済額の一部が都度料金としてかかってきます。

電子決済利用による手数料

オンライン診療では支払いにクレジットカードやQRコード決済等を使用する必要があります。

電子決済を行うと一定の手数料がかかり、決済手段によりますが概ね3%程度の減収となります。

これまで現金決済しか取り入れていなかった診療所においては大きな痛手となります。

設備費

オンライン診療を行うための設備として、カメラ・マイク付きのパソコンもしくはヘッドセット、安定した通信環境の構築が必要になりますが、月額では1万円にも満たないため、診療所運営から見たら大きな出費にはならないでしょう。

 

診療所目線で選択の余地があるのは「システムの導入・維持費用」です。

オンライン診療でたくさんの患者を診るつもりなら定額制のものを、利用者はそれほど見込めないが試しに導入するのであれば都度支払いのシステムを導入するのが良いでしょう。

アフターコロナにおけるオンライン診療の課題

ここまでみてきた通り、現状オンライン診療は患者サイドからは非常に便利です。

しかし医療者サイドから見ると、診療のクオリティ維持がむずかしいこと、費用対効果が見込めない可能性があることなどのデメリットがあり導入がまだまだ進んでいません。

さらに厚生労働省により公開されたオンライン診療に関するアンケートでも、通信不良による診療を行えなかった、コミュニケーションが十分に取れなかった、いったトラブルや診療の効率悪化を訴える医師も少なくありません。

しかし一方で患者の満足度は上がったことを感じる医師は多く、新型コロナウイルス感染症の蔓延が落ちついたとしても、この間にオンライン診療の便利さを体験した患者層は引き続き利用を続けるでしょう。

さらに、若年層の“診察=オンライン”に違和感を抱かない世代が大人になる時代が来ることを考えると、オンライン診療が今後も衰退する可能性は低いと思われます。

 

時限的措置であった初診からのオンライン診療も恒久化される見通しであり、オンライン診療から目を背け続ける診療所は立ち行かなくなる時代が来るかもしれません。

来年に控える診療報酬の改定や、今後のオンライン診療に対する指針の移り変わりは注視していく必要がありそうです。

 

 

記事執筆 外科医 S