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大学医局の上手なやめ方退局方法やマナーを解説

「医局に縛られるのはもう古い」という考え方がある一方で、医局の機能を高く評価する医師もたくさんいます。

医局に対する評価は、マスコミが報じるものと医療従事者が感じているものでは、ずいぶん差があるようです。

 

しかし「それでも退局しなければならない」と感じている医師も一定数いるはずです。

ただ医局を退局するときは、極力波風立てず、穏便に済むようにしたほうがよいでしょう。

 

この記事では、退局するときのマナーについて考えていきます。

医局の実態「ある教授のつぶやき」

ある医師が書いた、医局に対する考え方を紹介します(*1)。

少し長いのですが、医局の実態がわかると思います。

お礼奉公とは「奉公人が決められた期間の奉公が済んでも、恩返しとして主家や雇い主のもとにある期間とどまって働くこと」という意味ですが、医師の間でお礼奉公といえば学位(博士号)の取得後や留学から帰国後に、お世話になった教授や医局のために人気のない遠方の関連病院などに勤務することを意味します。

平成生まれの若手医師やゆとり世代の研修医には想像できないかもしれませんが、医局制度が全盛だった昭和の時代には医師のお礼奉公は全国どこの大学医局でも日常的によく見られた光景でした。

医局という制度は日本だけにしかない特殊なシステムであり、若手医師の医局離れが進んでいる昨今ですが、その閉鎖性や旧態依然が指摘される一方で昔の医局は「地方病院への医師派遣」という形で地域医療に一定の役割を果たしてきたのです。

この文章を書いたのは、大学医学部の教授や国立病院の院長を務めている方です。

つまり、医局事情にも病院事情にも精通している医師の医局観といえます。

 

この文章のポイントは次のとおりです。

 

<医局の実態>

  • 医局のため、教授のために尽くすことが求められる
  • 遠方の病院に勤務「させられる」ことがある
  • 若い医師には想像できない制度
  • 日本独自の制度
  • 医局離れが進んでいる
  • 閉鎖的であり旧態依然としている
  • 地域医療に貢献してきた

 

よいこともありますが、ネガティブな要素も少なくない印象があります。

そのため、医局を出る医師がいても不思議はないといえそうです。

 

*1:https://utsunomiya.hosp.go.jp/files/000068715.pdf

医局とけんか別れしてしまうデメリットを考える

「マナーを守って上手に退局しましょう」というアドバイスは、裏を返すと「けんか別れしないようにしましょう」という助言になります。

これから紹介する退局のマナーは面倒な内容も多く含まれています。

退局するのだから面倒なことはしたくないと感じるかもしれませんが、けんかはいうまでもなく、感情のもつれが生じても、デメリットが生じてしまいます。

 

けんか別れで退局するデメリットとは、医局が持つプラス面を得られなくなることです。

医局には次のようなプラス面があることが知られています。

医師にとっての医局のプラス面

  • 症例数を増やすことができるのでスキルアップできる
  • 多種多様な症例を治療できる
  • 最先端医療に触れることができる
  • 著名な医師の知見に触れることができる
  • 地域の中核的な医療に携わることができる
  • 厚生労働省の医療政策に触れることができる
  • 修行できる
  • 臨床にも基礎研究にも関わることができる
  • 研修会や勉強会へのアクセスが容易
  • 医師人脈や医療従事者ネットワークに加わることができる

 

これらのメリットの一部は、円満に別れることができれば、退局しても享受できます。

そして、これらのメリットは医局のなかにいると案外気がつかないものです。

失って初めてありがたみがわかった、といったことにならないようにしましょう。

大学から物理的に遠く離れる場合でも円満退局がよい

「所属している医局がある大学から遠く離れた故郷に戻って親の医院を継ぐから、医局との関係はそれほど重要ではない」と思っているとしたら注意が必要です。

医局(大学)から物理的な距離が遠く離れた場所に移るときこそ、むしろ医局との関係を断たないほうがよいからです。

医師が医局から遠い場所に行ってしまうと「ひとりぼっち」になってしまうかもしれないからです。

 

医師は一般人ではなく「先生」なので、特に地方では特別な存在になります。

そのため、地元の医師会や地元の病院に知り合いの医師がいないと、孤独を感じてしまうかもしれません。

そのような場合でも、退局した医局と、細い糸であってもつながっていれば安心できるものです。

退局マナー「上司への対応編」

それでは具体的に、退局するときのマナーを紹介します。

まずは、教授や准教授、医局長などの上司への対応編です。

教授や准教授などと良好な関係を築いておく

退局を決断するのは、多かれ少なかれ医局への不満があるからだと思います。

そして、世の中の働く人の多くの不満は、人間関係に起因します。

これは医局にいる医師にもあてはまるのではないでしょうか。

そのため、医師が退局を意識し始めているとき、教授や准教授たちによい感情を持っていないことがあります。

そのような感情を持っていても、退局を決断したら上司たちと良好な関係を築くようにしましょう。

 

関係が悪化していると、退局に関する協議に入ったとき、悪感情がさらに増幅されてしまうからです。

辞める、辞めさせないの話になると、双方が感情的になってしまいます。

もし、日ごろから教授たちに批判的な気持ちを持っていたら、退局を考え始めた瞬間からその感情を捨ててみてください。

そして、良好な関係を築けていると、退局の手続きがスムーズにいくだけでなく、退局後もよい関係を構築できるかもしれません。

第一報は教授に

教授が、第三者から「あの医局員は退局に向けて動いています」と聞かされることは、気持ちのよいものではありません。

医局を辞めたい気持ちが芽生えて、なおかつ誰かに相談したいと思ったら、家族以外ではまず教授に知らせたほうがよいでしょう。

 

教授には体面があります。医局を辞めるまではその医局の医局員なので、教授の体面を守るのは礼儀といえます。

教授が医局員の重要な人事情報について第三者から聞かされることは、体面を傷つけます。

本来は、教授に時間を取ってもらって退局の意向を伝えたほうがよいのですが、それに抵抗を感じたら、2人になった瞬間に「退局を考えておりまして」と一言いうだけでもよいでしょう。

第一報さえ教授に伝えておけば、詳細情報ならあとから教授の耳に入っても大ごとになりません。

誰かが教授に「○○が退局したいといっているそうです」と耳打ちしたときに、教授が「なんかそうらしいね」と返すことができればよいのです。

退局のマナー「辞めるとき編」

続いて、実際に辞めるときの退局のマナーをみていきます。

家庭の事情は受け入れてもらいやすい「でも嘘は禁物」

教授や准教授たちに「それなら退局するしかないね」と思ってもらえたら、退局はスムーズに進むでしょう。

家庭の事情はやむをえない内容が多いので、理解が得られやすい退局理由です。

例えば次のとおり。

 

<退局理由として受け入れられやすい家族の事情>

  • 親のクリニックを継ぐことになった
  • 親の介護や家族の看護などで、引っ越しができなくなった(協力病院に勤務することができなくなった)
  • 子供が進学で都心部に行くので、それについていくことになった

 

ただ、退局理由に家庭の事情を挙げる医師が多い点には注意してください。

つまり、家庭の事情を持ち出すと、少なからぬ人が「またか」と思ってしまいます。

そのため、個人情報をどれだけ開示すべきかという問題は残りますが、それでも可能な限り上司には詳しく家庭の事情を伝えたほうが無難です。

 

例えば「親の介護で引っ越しができなくなったので退局いたします」というよりは「私の父と妻の母が同時に要介護3になり、妻だけでは到底対応できなくなったので退局いたします」と伝えたほうが納得してもらいやすくなります。

 

そしてこれはいわずもがなですが、嘘はつかないでください。

家庭の事情は外部に知られにくく、退局のよい理由にもなるので、つい誘惑に駆られてしまうかもしれませんが、この手の嘘はなぜか高い確率で発覚してしまいます。

「嘘をついて退局した」ことがわかってしまうと、医局との関係が悪くなるばかりか、自分自身の信用も損ないます。

医療界は思ったより狭く、そのなかの医師の世界はさらに狭いことは、医師なら知っているはずです。

 

医局からの条件は極力受ける

 

退局を医局長に申し出て、それが受理されたとき、条件が出されることがあります。

それは、可能な限り受けるようにしたほうがよいでしょう。

 

医局を出る条件として出されるのは、大学病院での外来診療や、短期間の地方病院勤務などです。

1日でも早く退局したいと考えている医師にはどれも難しい条件かもしれません。

また「この期に及んでまだ『奉公』せよというのか」と悪感情が湧いてくるかもしれません。

しかし、退局者が増えて困っている医局は少なくありません。

また、お世話になった恩返しをして悪いことが起きるはずはありません。

さらに、最後の条件を受けたほうが、確実に退局できるメリットがあります。

「本当にこれが最後ですね。○年○月末をもって円満に退局させていだける、ということで間違いないでしょうか」と確認することができます。

 

医局人事のタイミングを利用する

 

教授に退局の意向を伝えるのは、どんなに遅くなっても、自分が希望する退局時期の半年前にしましょう。

1年前でも早すぎることはありません。

 

教授や医局長たちは、医局人事や協力病院人事などで「人繰り」をしなければなりません。

教授たちが次の人事で動かそうと思っていた医師が急に医局を辞めることになったら、また人繰りの調整をしなければなりません。

それだけで「迷惑をかけて退局した医師」と思われてしまいます。

 

それを避けるには、退局時期を、医局の大きな人事に合わせることです。

多くの人が動くときは、退局者が出てもなんとか対応できてしまうものだからです。

そのため、医局人事の半年前には、教授に伝えるようにしてください。

 

退局マナー「人編」

 

「退局したいけど、どうしたらよいのかわからない」と悩んでいる医師は、人を頼りましょう。

 

「退局の先輩」からアドバイスをもらう

 

退局した先輩医師に相談してみるとよいでしょう。

退局した先輩医師は、上手く退局したかもしれませんし、こじれて退局したかもしれません。

いずれの場合も参考になります。

退局した先輩医師が、教授たちが何を嫌がり何を気にしないか知っていることがあります。

ただ相談するときは、「教授を含む医局の人だけでなく、誰にも言わないでください」と口止めすることを忘れないでください。

退局した先輩医師の同僚の医師から医局に伝わってしまう可能性もゼロではないからです。

 

教授の人脈に助けてもらう

 

もし教授の先輩医師とコンタクトを取ることができれば、口添えを期待できるかもしれません。

例えば、現教授の前の教授が、地元の総合病院の理事長に就任していることがあります。

その先生を知っていたら、頼れるかもしれません。

現教授が頭が上がらない人の1人が、前教授だからです。

 

ただ、相談をした前教授から、かえって慰留されてしまうことがあるので注意してください。

「今、医局員が減ってしまって医局運営が大変だと聞いている。君には辞めないでもらいたい」などと言われてしまったら、辞めにくくなってしまいます。

したがって前教授を頼るのは、その人と懇意である場合に限定したほうがよいでしょう。

 

まとめ 揺るがなくなったら行動する

 

医局を出ようかどうか迷ったとき、自分にこう問いかけてみてください。

 

教授に「退局する」と伝えたとき「昇進させるから残って欲しい」といわれても、私は揺るがないか

 

もし、気持ちが揺らいでしまうかもしれないと思ったら、しばらくは退局は口にしないほうがよいでしょう。

退局すると宣言して、それを翻すと信用に関わることがあるからです。

医局を辞めるときは、「何が起きても退局する」くらいの気持ちを持っておいてください。

 

また、揺るがなくなるまで、しっかりとした退局理由を考えてみてください。

医局に残るメリットもしっかり考慮して、退局によるメリットのほうがはるかに大きいと判断できたら、マナーを守って退局に向かって活動してみてもよいのではないでしょうか。

 

 

記事執筆 医療ライター A