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医師のともコラム

COLUMN

与えられたチャンスを形にするー地域医療、睡眠医療、そして未来への挑戦

 

医師として働き始めて17年が経ちました。

 

振り返ると、自分が綿密なキャリアプランを描いて歩んできたというよりは、その時々で与えられた役割に真摯に向き合い、一つ一つ積み重ねてきた結果が今につながっているように感じています。

 

 

現在は地域病院の院長として病院運営に携わる一方、循環器内科医として診療を続け、睡眠医療や遠隔医療の普及にも取り組んでいます。

 

一見すると幅広い活動をしているように見えるかもしれませんが、私の中ではすべてが一つの理念でつながっています。

 

それは、当法人の理念である「生命だけは平等だ」という思いです。

 

私が睡眠医療に携わるようになったきっかけは、自ら希望したわけではありません。

 

後期研修医1年目に上司から「睡眠時無呼吸症候群を担当してほしい」と言われたことが始まりでした。

 

当時は循環器内科医としてカテーテル治療に強い憧れを持っており、正直なところ戸惑いもありました。

 

しかし、「与えられた仕事なら徹底的に取り組もう」と考え、国内外の文献を読み、多くの先生方から指導を受け、診療経験を積み重ねてきました。

 

結果として、睡眠時無呼吸症候群が高血圧、心不全、不整脈、脳卒中など数多くの循環器疾患と深く関係していることを学び、「治療」だけでなく「予防」という視点を持てるようになりました。

 

この経験は、私の医師人生を大きく変えた出来事だったと思います。

 

 

医療は専門分化が進み、それぞれの領域で高度な医療が提供されるようになりました。

 

一方で、患者さんは一人の人間であり、複数の疾患を抱えながら生活しています。

 

睡眠障害だけ、循環器疾患だけを診ていては、本当の意味で患者さんを支えることはできません。

 

だからこそ、専門性を持ちながらも全人的に患者さんを診る姿勢が、これからの医療にはますます求められるのではないでしょうか。

 

また、近年強く感じているのは、医療格差の問題です。北海道では、睡眠検査や専門治療を受けるために何時間もかけて通院される患者さんが少なくありません。

 

地方では専門医が不足し、必要な医療にアクセスできない地域も存在します。この課題を解決する手段の一つが遠隔医療です。

 

私たちは終夜睡眠ポリグラフ検査の遠隔モニタリングやオンライン診療などに取り組み、距離による医療格差を少しでも縮められるよう挑戦を続けています。

 

AIやICT技術は医師に代わるものではなく、専門医の知識や経験をより多くの地域へ届けるための手段であると考えています。

 

これからはテクノロジーをいかに社会実装し、患者さんの利益につなげられるかが重要になるでしょう。

 

 

一方で、病院長として学んだことも数多くあります。

 

管理職になって初めて、医療は医師だけで成り立つものではないことを改めて実感しました。

 

看護師、臨床検査技師、薬剤師、リハビリスタッフ、事務職員など、多職種が同じ方向を向いて初めて質の高い医療が提供できます。

 

私は毎日のように院内を歩き、職員と直接話をするよう心掛けています。現場の小さな声の中にこそ、病院をより良くするヒントがあるからです。

 

若い先生方からキャリアについて相談を受けることがありますが、私は「チャンスは自分で探すものでもありますが、与えられるものでもある」とお伝えしています。

 

最初から理想の仕事だけを選べる人は多くありません。しかし、目の前の仕事を誠実に積み重ねる人には、必ず次の機会が訪れます。

 

私自身、睡眠医療も病院経営も、自ら望んで始めたわけではありません。それでも、その時々で全力を尽くしたことが、現在の活動につながっています。

 

 

もう一つ大切にしているのは、「仲間をつくること」です。

 

医療が高度化し複雑化する現在、一人の医師だけで解決できる課題は限られています。

 

診療科や施設、企業、行政の垣根を越えて協力し合うことで、初めて社会実装できる医療も数多くあります。

 

私は今後、睡眠医療や遠隔医療の分野でも、多くの仲間とともに新しい医療モデルを築いていきたいと考えています。

 

医学は日々進歩しています。

 

しかし、どれほど医療技術が進化しても、その中心にいるのは患者さんです。

 

患者さん一人ひとりの人生や価値観に寄り添い、「この病院、この医師に出会えて良かった」と思っていただける医療を提供することが、医師として最も大切な使命だと思っています。

 

これからも臨床医として診療を続けながら、地域医療、睡眠医療、遠隔医療、そして後進の育成を通じて、次世代の医療に少しでも貢献していきたいと考えています。

 

与えられたチャンスに感謝し、その経験を社会へ還元していくことこそが、私自身のキャリアであり、これからも変わらない目標です。

 

 

 

 

 

 

執筆:後平 泰信先生

 

医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院長/虎の門病院睡眠呼吸器科非常勤医師。

旭川医科大学を卒業後、札幌東徳洲会病院で循環器内科の初期・後期研修を修了。

2014年に札幌徳洲会病院循環器内科に着任し診療経験を重ね、2023年4月に睡眠・無呼吸・遠隔医療センター長に就任。

2024年4月から札幌外科記念病院 病院長、2025年10月より現職。

中国における在留邦人向けの遠隔睡眠診療プロジェクトや、体位療法寝具などのスリープテック製品の企画・開発にも参画。

論文執筆や専門誌寄稿、市民向け講座やテレビ・新聞・Webメディアでの情報発信を通じて、エビデンスに基づくわかりやすい解説と患者一人ひとりに寄り添う診療を実践している。

 

  • 日本内科学会認定内科医
  • 日本循環器学会循環器専門医
  • 日本睡眠学会総合専門医・指導医
  • 日本スポーツ協会公認スポーツドクター