病院はホームページさえ作成していれば、今までは特に集患対策を行わずとも十分な患者数を確保することができていました。
しかし、日本社会は長期的な人口減少に突入することが明らかであるため、今後は病院間での患者獲得競争が激化することが予測されます。
本稿では、病院に今後求められる集患対策について、Web・オフラインのマーケティング戦略の事例を紹介しながら解説を行います。
病院が集患対策を行う理由
日本の人口減少が政府の公的な資料で予測されており、一定の患者数を確保するためには病院でも集患対策を行うことが今後は求められます。
内閣府|来推計人口でみる50年後の日本によると、長期的に日本が人口減少過程に突入することがデータで示されています。
2026年に人口1億2000万人を下回り、2048年には1億人を割り込み9913万人となり、2060年には8674万人になると報告されています。
現状では医院を経営する上で問題なく患者数を確保できているとしても、長期的な観点から見ると患者数の減少が見込まれます。
そのため、病院でも集患対策を行い患者数の確保に努めなければならない状況が、すぐそこまで来ていると言えます。
また、病院が集患対策を行う上で重要な点として、自院のコンセプトにあった患者を集めることにも意識を向ける必要があります。
自院にはどのような特徴があり、何の診療を得意としているのかに関して、対外的なアピールを継続して行うことが今後の病院の集患対策には求められます。
病院のWebマーケティング
以下のようなWebマーケティングを行い、集患対策を行う必要性が高まっています。
- ホームページ
- SEO
- リスティング広告
- Google map対策
- Web予約システム
それぞれの内容に関して、解説します。
ホームページ
ホームページは、病院のインターネット上の看板とも言える存在です。
そのため、自院の魅力をホームページで十分にアピールすることができなければ、集患対策の一歩目でつまずくことになるでしょう。
自院の魅力をホームページで伝えるためには、他院との違いを客観的に分析し、自院の一番のアピールできる診療内容や設備をホームページに掲載することが求められます。
さらに、どのような診療内容を行っているかだけでなく、どのようなスタッフが診療を行っているのかに関してもホームページに掲載することが、他院との差別化を図る上では重要なポイントとなります。
SEO
自院の魅力を十分にアピールできるホームページができたとしても、それを患者さんに見てもらうことができなければ、集患には繋がりません。
SEOを行うことにより、YahooやGoogleで検索した際に自院のホームページを発見してもらいやすくなります。
例えば、渋谷で眼科を探している患者さんは、スマートフォンで「渋谷 眼科」と検索し情報収集を始めます。
この時点で、GoogleやYahooの検索結果で自院のホームページが競合の医院よりも上位に表示されていれば、より多くの認知を獲得することができます。
認知が多くなるということは、実際に来院する患者数も増加することが予測できるため、SEOは集患対策の有効な手段だといえます。
リスティング広告
YahooやGoogleの検索結果に「広告」というラベルがついたリンク先が、表示されることがあります。
この「広告」のリンク先は、SEOで上位表示される枠を差し置いて、検索結果の最上位にリスティング広告で掲載される特別な枠です。
そのため、いくらSEOで上位表示ができたとしても、リスティング広告の枠よりも上に来ることは不可能であるという点には注意が必要です。
リスティング広告の一番のメリットは、料金を支払いさえすれば検索結果の最も目立つ掲載位置を獲得できるという点です。
なお、リスティング広告は検索キーワードの設定や入札価格の調整など、未経験者が扱うにはハードルが高い広告です。
ホームページ制作会社に相談し、リスティング広告のサポートを行っているか確認するのもいいかもしれません。
Google map対策
患者さんが病院に関して情報収集を行う際は、スマートフォンを手に取り「地域名 診療科目」で検索することから始めます。
「地域名 診療科目」で検索した際に、リスティング広告枠を除けば最も上位に表示されるものは基本的にはGoogle mapであり、特定の病院のホームページではありません。
Google map上に「地域名 診療科目」で検索したエリアの病院が表示され、患者さんは該当地域での病院を比較し検討することができます。
さらに、Google mapには各病院の口コミが掲載されおり、どのような医師がいるのか、どのような診療を行っているのか、スタッフの対応はどうだったのか、といった詳しい情報を確認することができます。
なお、スマートフォンの場合は画面サイズが小さいため、Google map上に3件程度しか表示されません。
該当地域内に4件の病院が存在するのであれば、1件はGoogle map上の目立つ位置には掲載されないということなります。
そのため、Google mapの中で上位に表示されるように対策を行うことが必要となります。
SEOと同じようにGoogle map上での情報も充実させることにより、Google map対策を行うことができます。
ホームページ制作会社に相談し、Google map対策を行っているか確認するとよいでしょう。
Web予約システム
予約制を取っていない病院であれば、患者さんはどの程度待ち時間があるのかわかりません。
さらに、病院に行かないと混雑しているのかわからないため、患者さんにとって非常に不便であることをまずは理解する必要があります。
そのため、予約システムのない病院であれば「1時間以上も待ったのに、診療はたったの5分」という状態になりやすいため、患者満足度は低下し患者離れに繋がることもありえるでしょう。
一方、Web予約を導入している病院であれば、現在の受付人数をWebサイトで確認できるため、どの程度混雑しているか来院前に確認することができます。
さらに、受付状況が混雑しているようであれば病院に行く時間帯をずらしたり、別の日に変更したりすることができます。
そのため、Web予約は患者さんにとってメリットが大きいシステムであり、集患に役立つとも言えます。
病院のオフラインマーケティング
病院の集患対策はWebだけでなく、オフラインでも行うことを忘れてはいけません。
Web上の集患対策で拾いきれない患者層をオフラインで集めることにより、さらに多くの患者数を確保することができます。
診療サービスの見直し
他院との差別化を行うためには、保険診療であっても最新の診療サービスを提供することが求められます。
最新の診療サービスを患者さんに提供するためには、学会やスタディーグループなどで研鑽を積むだけでなく、最新の医療設備を導入できるだけの安定した経営基盤の整備が必要です。
また、自費診療が可能な診療科目であれば、他院の診療サービスや価格を調査した上で戦略的に診療サービスの内容と価格を決定することも重要です。
このように診療サービスの内容を常にブラッシュアップし他院との差別化を行うことにより、集患対策としての効果が期待できるかもしれません。
リーフレット、チラシの作成
他院との診療サービスの差別化を行い、自院の売りとなる診療サービスが決まれば、リーフレットやチラシを作成し院内で活用します。
- 患者さんが手に取れるように、受付にリーフレットを置く
- 興味を持った患者さん用の説明チラシを、診療室に常備する
- おすすめの診療サービスのポスターを、院内掲示板に貼る
このようにリーフレットやチラシを活用し、来院した患者さんへ診療サービスの認知を高め、自院の特徴が患者さんに浸透するように取り組みましょう。
DM、ポスティング
近隣の住民に対してDMを送付することも、集患対策として有効な手段の一つです。
特に開業前、リニューアル、新規設備の導入、新規診療の開始といった患者さんに伝えたい情報がある場合は、積極的にDMを活用することもおすすめします。
看板
厚生労働省|平成29年受療行動調査(確定数)の概要によると、外来の場合の病院を選んだ理由は、「交通の便が良い」が27.2%で2番目に多いというデータがあります。
幹線道路沿い、電車を降りたホーム付近、人通りの多い交差点といった場所に看板を出し、交通の便の良さをアピールし集患につなげると良いかもしれません。
病院の集患対策まとめ
本稿では、病院の集患対策としてWeb・オフラインのマーケティング戦略について解説を行いました。
日本では長期的に人口減少が確実視されているため、病院間の患者獲得競争は激化することが予測されています。
そのため、Web・オフラインの両輪で集患対策を行うことは、患者数を確保するための有効な手段になり得ます。
ホームページ制作会社や広告代理店などの外部の専門家の力を借りながら集患対策を行い、経営の安定化を図ることが今後の病院経営には求められるかもしれません。
記事執筆 医療ライター 土光宜行