医師のための求人情報・転職サイト|医師のともキャリア

医療機関採用担当者の方へ
求人掲載数3905
お電話でのお問い合わせ 03-6416-1922 (平日9:00 〜 18:00)
メールでお問い合わせ キャリア相談

医師のための求人情報・転職サイト|医師のともキャリア

医師のともコラム

COLUMN
医師のともコラム
COLUMN

白衣からスクラブへ | 医師の服装トレンドの変化とその理由

 

医師の服装には、主に白衣とスクラブの2種類があります。

近年では白衣からスクラブへの移行が進んでおり、その背景には様々な理由があります。

 

本稿では、白衣とスクラブの違いやそれぞれのメリット・デメリットだけでなく、医師の服装の変化とその背景、そしてアンケートからわかる適した服装の条件についても解説します。

 

白衣とスクラブの違い

 

医療現場で着用される代表的な服装として、白衣とスクラブがあります。

白衣の歴史を振り返り、白衣とスクラブの違いについて説明します。

 

白衣の歴史

 

白衣の登場前、医師は黒い服を着用していたことをご存知でしょうか。

患者を診察する場はフォーマルな場であるという考え方から、その場に適した服装として黒い服が着用されていたと考えられます。

 

その後、19世紀後半以降のヨーロッパ、アメリカにおいて、白衣が医師の服装として採用されました。

白色は清潔感や信頼性を表す色とされており、医療現場での使用に適していると考えられました。

 

白衣は医療従事者の象徴的な衣服として定着し、現在でも医療機関で使用されています。

 

日本において白衣が普及したのは、大正初期と考えられています。

江戸時代には明確に医師の資格は存在していませんでしたが、明治以降に西洋から医学の導入を図った結果、医師の服装も西洋のスタイルに合わせ、白衣が着用されるようになりました。

 

白衣の特徴

 

白衣は、医師が身に着ける伝統的な服装であり、一般的には長袖で前開きのデザインで、複数のポケットがついています。

白い色は清潔感があり、医療現場で使用されることが多いため、医師の服装といえば白衣というイメージが強いのではないでしょうか。

 

白衣は患者との距離感を保ち、医師の専門性をアピールするという点において、患者やそのご家族からの信頼を得るために重要な役割を果たしてきました。

 

白衣が着用されなくなった理由

 

最近では白衣を着用する医師は減少し、スクラブを着用する医師が増加しています。

感染管理の観点から、白衣よりもスクラブのほうが適しているという点が、要因の一つとして挙げられます。

 

イギリス保健省が2007年に打ち出したガイドライン「UNIFORMS AND WORKWEAR An evidence base for developing local policy」では、患者のケアを行う際は、半袖のシャツやブラウスを着用し白衣は避けるように記載されています。

白衣の袖口やボタン類は最近に汚染されやすく、汚染箇所が患者と接触する可能性が高いためです。

 

また、感染管理の観点以外でも、動きやすさ、デザインなど様々な理由により医師の服装は白衣ではなく、スクラブが選択されるようになってきたようです。

 

スクラブの特徴

 

スクラブは、白衣に代わって医療現場での使用が増えてきた、より機能的な服装です。

白衣よりも動きやすく、洗濯が容易であるため、清潔さを保つことができます。

 

また、スクラブには多様な色やデザインがあり、多くのラインナップの中から選ぶことができます。

診療科目によっては、患者の不安をやわらげ安心感を与えるために、パステルカラーやキャラクター柄など患者層に合わせて選択できるというメリットがあります。

最近では、白衣よりもスクラブがより一般的になることで、スクラブのデザインや機能性が進化しているため、今後ますます医療現場での使用が多くなることが予想されます。

 

しかしながら、看護師や検査技師などコメディカルの職員もスクラブを着用しており、職種間の区別がつきにくい場合があります。

そのため、医師は診療時にスクラブの上に白衣を着用し、処置をするときは白衣を脱ぐなどの対応をルール化している医療機関もあるようです。

 

服装の色の変化

 

医師の服装は、白一色の白衣から、様々な色のユニフォームが着用されるようになりました。

服装の色に変化に影響を与えた要因として、補色残像と白衣高血圧症が挙げられます。

 

補色残像の影響

 

赤や青などの有彩色を見た後に、白い壁などを見ると、直前に見ていた色の補色(対照色)が視界に現れることがあります。

この現象を「補色残像」といいます。

 

医療現場では、長時間の外科手術などで赤色の血液を長時間見続けた場合、視線を向けた先で赤色の補色である青緑色が残像として現れてしまいます。

補色残像の影響を和らげるために、手術着や手術室の壁・カーテンなどは青緑色のものに変更されるようになりました。

 

白衣高血圧症の影響

 

医師の服装の色が多様化した背景には、白衣性高血圧の影響も考えられます。

白衣高血圧症とは、普段は高くない血圧が、医師の診察時には高くなってしまうことを指します。

 

患者が病院での診察や治療に不安や緊張を感じることが原因で、血管が収縮して血圧が上昇するためです。

白衣が医療従事者の服装として定着していたこともあり、白衣を見ただけで血圧が上昇してしまう患者もいたため、白以外の色のユニフォームが着用されることが増えたという背景があります。

 

アンケート調査からわかる、適した服装の条件

 

ナースウェアに関する調査研究」という、日本の看護師の服装に関する研究レポートを紹介します。

 

研究の概要

 

この研究は、ナースウェアの現状と問題点を広く拾い上げることを目的とし、看護師がナースウェアを選択する際の意識調査および着用実態調査を行ったものです。

この調査では、554人の看護師を対象にアンケート調査が行われました。

 

アンケートの結果、快適性、素材、デザインが服装選択の上位優先事項であることがわかりました。

特に、「動きやすさ」が最も重要視されており、回答者の45%が現行のナースウェアに「動きにくさ」を感じているという実態がみられます。

 

看護師の職務は患者の介助・補助に関わる業務が多く、負荷との関係を明確にし、改善が必要であることが示されています。

 

また、看護師の勤務場所や年齢によって、重視する項目に違いがあることもわかりました。

病棟看護師と外来看護師でクロス集計した結果、「動きやすさ」、「形態安定性」、「付加機能の付与」については統計的に有意差が認められ、これら4項目については若手看護師に比べ、ベテラン看護師の方が重視する傾向があることがわかりました。

 

ナースウェアの役割と求められる改善

 

この研究では、ナースウェアの改善に向けた提言も行われています。

 

具体的には、ナースウェアは作業内容に即した運動機能性・快適性を備えたものでなくてはならないということです。

動きやすく、着心地の良いナースウェアは疲労感を減らし、作業効率を高めることができます。

 

また、ナースウェアを着用することで、患者さんが安心して医療サービスを受けられるという効果が期待できます。

 

この研究では、ナースウェアの現状を把握し、問題点を抽出することで今後の改善課題を明確にすることが目的でした。

研究結果を踏まえ、現場の声を反映したナースウェアの改善が求められます。

 

ナースウェアは看護師の仕事に欠かせないものであり、快適性や動きやすさが向上することで、看護師の負担軽減や医療ミスの防止につながると考えられます。

 

医師の服装に求められる条件とは

 

上記のナースウェアに関する調査研究から、医師の服装においても以下のような条件が求められると考えられます。

 

条件 内容
快適性 長時間勤務が多く、体に負担のかかる動きをすることもあるため、動きやすく快適な服装が望まれる。

長時間着用してもシワになりにくく、清潔感が損なわれない形態を保つ素材が適している。

素材 衛生面や清潔面も重要であり、通気性が良く、清潔に保ちやすい医療現場で使用するのに適した素材が求められる。
デザイン 患者からの信頼感や医療サービス提供者としてのイメージも重要なため、デザインにも配慮が必要。

プロフェッショナルな印象を与えるデザインが良いと考えられる。

 

上記の表のように、医師の服装には快適性や素材、デザイン、動きやすさ、形態安定性など、様々な条件が求められます。

 

まとめ

 

本稿では、白衣からスクラブへの医療従事者の服装トレンドの変化とその理由について解説しました。

 

日本において白衣が普及したのは、大正初期と考えられています。

白い色は清潔感があり、医療現場で使用されることが多いため、医師の服装といえば白衣が選択されていました。

 

しかし、感染管理、動きやすさ、デザインなど様々な理由により、最近では白衣ではなく、スクラブが選択されるようになりました。

今後は、医療現場の進化や技術の進歩に合わせて、服装のデザインや素材も変化していくことが考えられます。

 

防水・抗菌性能の高い素材のように、機能性や快適性をより高めた服装が開発されることが期待されています。

 

 

 

記事執筆  医療ライター 土光宜行