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医師のともコラム

COLUMN

医師が犯した罪の代償:厳しい社会的評価と再起の岐路

 

被害届が提出され医師が逮捕された場合、報道機関により所属名を含めた実名報道がなされます。

 

公共性・社会性・重要性を踏まえた報道となりますが、「〇〇で逮捕された医師 △△の詳細」などと題して、インターネットサイト・SNSなどにより、この情報は瞬く間に拡散され、顔写真も公開されるケースも少なくありません。

 

何より恐ろしいのは、あらゆるホームページやSNS上に掲載している自分の個人情報がすべて筒抜けになり、自宅の住所が特定され家族にまで迷惑がかかってしまうことです。

 

実名報道がされた場合、多くの開業医にとって診療の継続が困難となるケースがあるようです。

 

罪状によっては大幅な患者減少による経営破綻に陥り、閉院を余儀なくされることもあります。

 

この一方で、医療機関に勤務している医師の場合、雇用契約・就業規則に基づき、即日懲戒解雇などの処分が下される可能性が高いでしょう。

 

逮捕されてから最長20日は勾留されますので、勤務先にバレないということはほぼありえません。

 

示談ができる場合を除いて、起訴されれば罰金刑や懲役・禁錮刑を含めた有罪判決が下されます。

 

その結果、前科がつくために履歴書の賞罰には真実を記載しなければならなくなります。

 

ここまでは一般の方が受ける刑罰と同じです。

 

懲役・禁錮・罰金などの実刑判決を受諾して、それだけをクリアすればよい・・・というわけではありません。

 

次に待ち構える難関は医師免許にかかわる行政処分であり、医師としての審判になります。

 

医師免許の行方

 

明らかな刑事事件にかかわる場合には、医師免許取消、医業停止(3年以内)という厳しい処分があります。

 

年に数回、厚生労働省で開催される医道審議会により、該当者の処分が決定されます。

 

一方で、制度上、免許取り消し期間や医業停止期間が経過した後は、欠格期間を経てから再教育研修を受けて合格すれば、医師免許は再度認められる仕組みも存在します。

 

たとえ、インターネット・SNSや日本版性犯罪データベース(DBS)に記載されていても、法的には医師としてやり直しができるのです。

 

そのため、性犯罪、殺人事件といった重罪を含めて、どこかの医療機関で医師として勤務できる可能性が残されています。

 

小児科医師Xの例

 

X医師は、2年間の初期臨床研修を経て、大規模な小児科医療センターで小児科の後期医療研修を開始しました。

 

1年目は医療機関内ではまだ外勤は認められておらず、医業に専念しておりました。

 

先輩医師・同僚医師からも、他職種スタッフからも評判は良かったようです。

 

ところが、魔が刺したのは研修2年目。

 

まだ1年の小児科研修にもかかわらず、ある程度の手技や診療ができると錯覚したのか、生活の質を上げるために時間外労働(他医療機関の日直・当直や休日診療をするクリニック勤務)を増やしました。

 

学生時代には医学部の体育会に入部していたため体力的にはタフであり、週に1-2回の当直や時間外の外来のパート勤務に勤しんで、瞬く間にX医師の収入は月80万円に増加しました。

 

結果として浪費が続き経済感覚が狂い始め、若さゆえの軽率さもあり、SNSを通じて15~17歳の複数の未成年女性と知り合い、金銭を支払っての性交渉を行うようになりました。

 

月に10回ほど同様の行為を繰り返していたところ、被害届が提出され、自宅で逮捕されました。

 

最終的には容疑を認め、略式起訴・罰金の有罪判決となりました。

 

前述の審議会による行政処分は医業停止期間が1年でしたが、その1年間は自ら医療相談のサイトを立ち上げて医療相談に応じる、医学部生への教育を行う、株式・FXにより収益を得るなどして、生活はできていたようです。

 

その後、X医師はいくつかの医療機関に面接に行きましたが、報道のほとぼりは覚めておらず20か所から断られました。その中でも、1つの医療機関だけは慢性的な医師不足であったこと、オーナー医師が「犯罪の前科があっても更生できる道が必要」という考えで、非常勤医師として復帰することができました。

 

ただ、医療現場、とくに診療所では女性がほとんどを占めるため、彼の実態がわかるにつれて院長に解雇を依頼するということはありました。

 

患者さんへの配慮としては、本名を提示せず「Dr,(英語表記で名だけ)」のようにしたり、あえて女性患者のカルテを回さなかったりということもしていたようです。

 

その後、地域住民も彼の素性を知りクリニック受診を敬遠するようになりました。

 

素性が発覚した理由としては、他医療機関への紹介状を記載する時に、「Dr,(英語表記で名だけ)」では医療保険上通用せず本名を提示しないといけません。

 

そのため、紹介先医療機関の女性スタッフからリークがあり発覚したようです。

 

その後、この医師は解雇されましたが、現在では女性を対応しない都心部の自費クリニック(AGA・EDなど)と障害者施設で勤務をしています。

 

犯した罪を償うことは当然の義務ですが、せっかく医師になれても人生を棒に振ってしまうような判断をすれば、その代償は非常に大きいと言わざるを得ません。

 

 

 

 

執筆 ドクター TT