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医師のともコラム

COLUMN

再生医療・細胞治療:未来医療への挑戦と臨床応用の現在

 

再生医療・細胞治療は、従来の医療では治療が困難であった様々な疾患に対する新たな治療法として、大きな期待が寄せられています。


特に、iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞を用いた治療法は、これまで治療法のなかった疾患に対する根本的な治療法となる可能性を秘めています。

 

本稿では、医師の皆様に向けて、再生医療・細胞治療、特にiPS細胞やES細胞を用いた治療法の現状と課題、そして未来への展望について、最新の知見を交えながら解説いたします。

 

再生医療・細胞治療:新たな医療パラダイムの幕開け

 

再生医療・細胞治療とは:細胞を用いて組織や臓器の機能を再生

 

再生医療・細胞治療とは、細胞を用いて、傷ついたり、病気になった組織や臓器の機能を再生・回復させる治療法です。


従来の治療法では、症状を緩和したり、進行を遅らせることが中心でしたが、再生医療・細胞治療は、根本的な治療法となる可能性を秘めています。

 

様々な細胞を用いた治療法:体性幹細胞、ES細胞、iPS細胞

 

再生医療・細胞治療に用いられる細胞は、大きく分けて以下の3種類があります。

 

  • 体性幹細胞: 私たちの体の中に存在し、組織の修復や再生を担う細胞
  • ES細胞(胚性幹細胞): 受精卵から作製される、あらゆる組織や臓器に分化する能力を持つ細胞
  • iPS細胞(人工多能性幹細胞): 皮膚などの体細胞に特定の因子を導入することで、ES細胞と同様の多能性を獲得させた細胞

 

再生医療と細胞治療の違い:組織再生と細胞機能の回復

 

再生医療と細胞治療は、どちらも細胞を用いた治療法ですが、その目的が異なります。

 

  • 再生医療: 細胞を用いて、損傷した組織や臓器を再生することを目的とする
  • 細胞治療: 細胞を体内に投与することで、細胞が本来持つ機能を発揮させて治療効果を期待する

 

iPS細胞とES細胞:未来医療を担う多能性幹細胞

 

多能性幹細胞:あらゆる細胞に分化する可能性を秘めた細胞

 

iPS細胞とES細胞は、体のあらゆる組織や臓器に分化する能力を持つ「多能性幹細胞」です。


この性質を利用することで、これまで治療法のなかった疾患に対する根本的な治療法の開発が期待されています。

 

  • ES細胞: 倫理的な問題や、拒絶反応のリスクがある
  • iPS細胞: 倫理的な問題が少なく、患者自身の細胞から作製することで、拒絶反応を抑えられる可能性がある

 

iPS細胞を用いた臨床研究・治験:様々な疾患を対象に研究が進む

 

iPS細胞を用いた臨床研究・治験は、国内外で数多くの疾患を対象に実施されています。


例えば、パーキンソン病、脊髄損傷、心筋梗塞、加齢黄斑変性など、様々な疾患に対する治療法の開発が進められています。

 

iPS細胞研究の課題:安全性確保、コスト削減、大量培養技術

 

iPS細胞を用いた治療法の実用化には、安全性確保、コスト削減、大量培養技術の確立など、いくつかの課題を克服する必要があります。

 

  • 安全性確保: iPS細胞は、がん化のリスクがあるため、安全性を確保するための技術開発が不可欠
  • コスト削減: iPS細胞を用いた治療は、高額な費用がかかるため、コスト削減が課題
  • 大量培養技術: 治療に必要な量のiPS細胞を安定的に供給するための大量培養技術の確立が求められる

 

再生医療・細胞治療の臨床応用:現状と今後の展望

 

承認された再生医療等製品:皮膚、軟骨、角膜など

 

日本では、再生医療等安全性確保法に基づき、安全性と有効性が確認された再生医療等製品が承認されています。


2023
6月現在、皮膚、軟骨、角膜など、いくつかの組織・臓器に対する再生医療等製品が承認されています。

 

再生医療・細胞治療の倫理的な問題:倫理委員会による審査と社会との対話

 

再生医療・細胞治療は、生命の根源である細胞を扱うことから、倫理的な問題も孕んでいます。


特に、ES細胞を用いる場合は、受精卵を破壊する必要があり、生命倫理の観点から議論が続いています。

 

再生医療・細胞治療を実施する際には、倫理委員会による審査や、社会との対話を通じて、倫理的な問題点について慎重に検討していく必要があります。

 

再生医療・細胞治療における医師の役割:適切な情報提供と患者との意思決定

 

再生医療・細胞治療は、まだ発展途上の技術であり、その効果や安全性、費用などについては、十分な情報が得られていない場合もあります。


医師は、再生医療・細胞治療に関する正しい知識を習得し、患者さんに対して、治療法のメリットだけでなく、リスクや費用についても、わかりやすく説明することが重要です。

 

また、再生医療・細胞治療を受けるかどうかは、患者さんが自身の価値観に基づいて判断する必要があります。


医師は、患者さんの意思決定を支援し、患者さんと共に治療方針を考えていくことが求められます。

 

まとめ

 

再生医療・細胞治療は、多くの疾患に対する新たな治療法として期待されていますが、実用化には、安全性確保やコスト削減など、解決すべき課題も残されています。


医師は、再生医療・細胞治療に関する最新の情報を収集し、倫理的な問題点も踏まえながら、患者さん一人ひとりに最適な医療を提供していくことが重要です。

 

 

参照サイト:

厚生労働省

独立行政法人医薬品医療機器総合機構