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医師のともコラム

COLUMN

保護中: 医師がSNSで伝える想い:診察室では伝えきれない健康のヒント

 

「ぼっちの内科医」としてSNSで発信を始めてから、多くの方に健康に関する情報を届ける機会をいただくようになりました。

 

日々の診療とSNSでの発信。

 

この二つは同じ「医療」に関わるものですが、実際にやってみると、その役割は大きく違うものだと感じています。

 

 

診察室では、目の前にいる一人の患者さんと向き合います。

 

年齢、性別、これまでの病気、現在飲んでいる薬、生活習慣、仕事や家庭環境など、一人ひとり異なる背景があります。

 

同じ「頭痛」でも原因は違いますし、同じ「高血圧」でも必要な治療が全員同じとは限りません。

 

だからこそ、本来の医療はとても個別性の高いものです。

 

 

一方で、SNSでは不特定多数の方に向けて情報を発信します。

 

「これを食べれば病気が治る」「この方法をやれば絶対に健康になる」といった発信はできません。

 

むしろ、そんな単純なものではないからこそ、医療は難しいのだと思います。

 

SNSで僕が意識しているのは、実際の診療をそのまま再現することではありません。

 

 

忙しい毎日の中でも、少し意識すれば取り入れられること。

 

食事や睡眠、運動など、健康のためにできる小さな工夫。

 

「まずはこれからやってみよう」と思える、できるだけ身近な健康情報を届けることです。

 

そのため、SNSで発信している内容と、実際の診療で行っている治療には、どうしても違いがあります。

 

 

診察室では、検査を行い、診断を考え、その人に必要な治療を選択します。

 

しかしSNSでは、一人ひとりを診察することはできません。

 

この違いには、正直なところ難しさも感じています。

 

わかりやすく伝えようとすればするほど、本来は複雑な医学的な話をシンプルにしなければならないことがあります。

 

でも、簡単にしすぎれば誤解を生むかもしれません。

 

「多くの人にわかりやすく伝えること」と「医学的な正確さを守ること」。

 

このバランスは、SNSを運用する上でいつも考えていることです。

 

 

それでも、SNSには診察室とは違った大きな魅力があります。

 

普段の診療では、一日に診察できる人数には限りがあります。

 

どれだけ頑張っても、目の前の患者さん一人ひとりと向き合うことが基本です。

 

しかしSNSでは、一つの投稿が数万人、時には数百万人以上の方に届くことがあります。

 

医師として伝えたいと思っていた情報を、一対一ではなく、一対多数へ届けることができる。

 

これはSNSを始めて、僕自身が最も驚いたことの一つでした。

 

そして何より嬉しいのが、コメントやDMを通して直接声をいただけることです。

 

「先生の投稿を見て、生活習慣を見直して体調が良くなりました」

「不安だったけど、先生の動画を観て少し安心できました」

「家族みんなで情報を共有しています」

 

そんな言葉をいただくたびに、発信していてよかったと思います。

 

 

もちろん、SNSを見ただけで病気が治るわけではありません。

 

それでも、一つの投稿が誰かにとって健康について考えるきっかけになったり、受診するきっかけになったりすることはあります。

 

それだけでも、医師として発信する意味があるのではないかと感じています。

 

また、コメントやDMを読んでいると、本当に多くの人がさまざまな悩みを抱えていることにも気づかされます。

 

体の不調だけではありません。

 

仕事のこと、家庭のこと、将来への不安。

 

誰にも相談できず、一人で悩みを抱えている方も少なくありません。

 

病院に来る患者さんだけを見ていては気づけなかった悩みが、SNSにはたくさんあります。

 

だからこそ、SNSは僕にとって「発信する場所」であると同時に、「多くの人の声を聞く場所」でもあります。

 

 

SNSを運用してもう一つ大きく変わったことがあります。

 

それは、医療業界以外のさまざまな人や企業と関わるようになったことです。

 

企業の方、クリエイター、マーケティングに携わる方、商品を作っている方など、普段医師として働いているだけでは出会わなかった人たちと話す機会が増えました。

 

医療の世界にいると、どうしても自分の常識が当たり前になってしまいます。

 

しかし、違う業界の人と関わることで、「そんな考え方があるんだ」と思うことが本当に増えました。

 

医療の知識だけではなく、人にどう伝えるのか。

 

どうすれば興味を持ってもらえるのか。

 

専門的な情報を、どうすれば生活の中に落とし込めるのか。

 

SNSを通じて、僕自身もたくさん学ばせてもらっています。

 

医師として働くことと、SNSを運用すること。

 

一見すると全く違う仕事のように思えるかもしれません。

 

でも今の僕にとって、この二つはどちらも「誰かの役に立つための仕事」です。

 

診察室では、一人の患者さんと向き合う。

 

SNSでは、多くの人に健康について考えるきっかけを届ける。

 

どちらにも難しさがあり、どちらにも責任があります。

 

 

だからこそ、これからも医学的な視点を大切にしながら、難しいことをできるだけわかりやすく、そして毎日の生活に取り入れやすい形で伝えていきたいと思っています。

 

SNSを始めたことで、僕自身の世界は大きく広がりました。

 

そして、画面の向こうには、本当にさまざまな悩みを抱えながら毎日を頑張っている人がいることを知りました。

 

これからも「ぼっちの内科医」として、誰かの健康を少しでも支えることができるように。

 

そして、「見てよかった」と思ってもらえる発信を続けていきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

執筆:加賀 康宏先生

 

日吉駅前こころみクリニック勤務医師。

大学病院やクリニックで診療経験を重ね、総合内科・消化器内科クリニック院長等を経て現職。

 

胃カメラ・大腸カメラ、腹部超音波などの検査から、総合内科診療まで幅広く対応。

脂肪肝を含む肝臓疾患や消化器疾患の診療経験が豊富。

医療情報をSNS等で分かりやすく発信し、予防・早期発見につながる啓発にも注力している。

 

  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本消化器病学消化器病専門医
  • 日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
  • 東京都難病指定医