病院などの医療機関が広告を出す際は、医療法によって掲載できる内容が定められています。
本稿では、病院や診療所の広告が規制される理由や、どのような媒体が広告となるのかという定義について解説するだけでなく、広告可能な内容、広告のNG例、ホームページで広告できる内容について解説します。
チラシやホームページを作成する際は、ぜひ参考にしてください。
広告が規制される理由
病院、診療所、歯科医院が行う広告、いわゆる医療に関する広告は、患者への影響が大きいため、医療法やその他の法律により広告できる内容が限定されています。
厚生労働省)医療広告ガイドラインに、医療に関する広告が規制される理由として、次の2点が挙げられています。
- 医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しいこと。
- 医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難であること。
このように、病院、診療所、歯科医院が広告を出す際は、医療法などの法律により掲載できる内容が限定されているという点を、まずは理解する必要があります。
広告の定義
医療に関する広告を行う際に次の2点の両方を満たす場合は、規制の対象になると医療広告ガイドラインに記載されています。
- 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
- 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
実際に広告として見なされる例、見なされない例を挙げ、広告の定義について解説します。
広告の例
医療広告ガイドラインに、広告に該当する媒体の具体例が挙げられています。
- チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。)
- ポスター、看板(プラカード及び建物又は電車、自動車等に記載されたものを含む。)、ネオンサイン、アドバルーンその他これらに類似する物によるもの
- 新聞紙、雑誌その他の出版物、放送(有線電気通信設備による放送を含む。)、映写又は電光によるもの
- 情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等)
- 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演述によるもの
このように、紙媒体、電子媒体、文字、画像、動画、口頭といった広告の形態や形式を問わず、誘引制と特定性があるものであれば、医療に関する広告として規制の対象になります。
広告とは見なされない例
医療広告ガイドラインには、広告とは見なされない5つの例も挙げられています。
- 学術論文、学術発表等
- 新聞や雑誌等での記事
- 患者等が自ら掲載する体験談、手記等
- 院内掲示、院内で配布するパンフレット等
- 医療機関の職員募集に関する広告
これらの例は、広告として見なされる条件である、誘引性、もしくは特定性のどちらかを満たしていないため、規制の対象外となっています。
ホームページは広告として見なされるようになった
医療機関のホームページは広告として見なされておらず、医療に関する広告の規制の対象外となっていました。
しかし、平成30年6月に医療法が改正され、現在はホームページも規制の対象となっています。
医療法などで定めている内容に違反した不適切な内容があれば、行政による立入検査や是正命令、または罰則の対象となります。ホームページを作成する際は十分に注意する必要があります。
医療広告ガイドラインに記載されている、広告可能な内容に関して次の表にまとめました。
広告可能な内容 | 詳細 |
医師または歯科医師であること | 病院または診療所に従事する薬剤師、看護師その他の医療従事者に関する氏名等は広告可能。 |
診療科名(医科) | 次の診療科名は広告可能
内科 呼吸器内科 循環器内科 消化器内科 心臓内科 血液内科 気管食道内科 胃腸内科 腫瘍内科 糖尿病内科 代謝内科 内分泌内科 脂質代謝内科 腎臓内科 神経内科 心療内科 感染症内科 漢方内科 老年内科 女性内科 新生児内科 性感染症内科 内視鏡内科 人工透析内科 疼痛緩和内科 ペインクリニック内科 アレルギー疾患内科 内科(ペインクリニック) 内科(循環器) 内科(薬物療法) 内科(感染症) 内科(骨髄移植) 外科 呼吸器外科 心臓血管外科 心臓外科 消化器外科 乳腺外科 小児外科 気管食道外科 肛門外科 整形外科 脳神経外科 形成外科 美容外科 腫瘍外科 移植外科 頭頸部外科 胸部外科 腹部外科 肝臓外科 膵臓外科 胆のう外科 食道外科 胃腸外科 大腸外科 内視鏡外科 ペインクリニック外科 外科(内視鏡) 外科(がん) 精神科 アレルギー科 リウマチ科 小児科 皮膚科 泌尿器科 産婦人科 産科 婦人科 眼科 耳鼻いんこう科 リハビリテーション科 放射線科 放射線診断科 放射線治療科 病理診断科 臨床検査科 救急科 児童精神科 老年精神科 小児眼科 小児耳鼻いんこう科 小児皮膚科 気管食道・耳鼻いんこう科 腫瘍放射線科 男性泌尿器科 神経泌尿器科 小児泌尿器科 小児科(新生児) 泌尿器科(不妊治療) 泌尿器科(人工透析) 産婦人科(生殖医療) 美容皮膚科 など |
診療科名(歯科) | 次の診療科名は広告可能
歯科 小児歯科 矯正歯科 歯科口腔外科 |
病院または診療所の名称、電話番号、所在の説明、管理者の氏名 | 次の4点が広告可能
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診療日、診療時間、予約による診療の実施の有無 |
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「○○病院」または「○○診療所」と示す | 保険医療機関、労災保険指定病院、労災保険指定診療所、である旨などを記載しても良い |
参加する地域医療連携推進法人名や参加していること | 地域医療連携推進法人に参加する病院等の数や名称についても広告可能 |
病院または診療所の構造設備・人員配置に関して |
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診療に従事する医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者に関して |
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病院または診療所の管理、運営に関して |
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紹介可能な医療機関など |
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医療に関する情報提供に関する情報 |
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提供される医療の内容 |
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医療の提供の結果に関する事項 | 主な内容
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広告掲載のNG例
医療に関する広告として、よくある不適切な事例を次の表にまとめました。
NG例 | 詳細 |
診療科目として認められていない科目 | アンチエイジング、インプラント |
最上級の表現 | 「最高の医療環境を整備しています」といった最上級の表現はNG |
他の医療機関との比較 | 「日本一」「県内一」「県内でも有数の」
「他の医療機関と比較して…」 |
新聞、雑誌の記事、専門家の談話などの引用、掲載 | 次の3点は、広告のNG例である
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虚偽広告 | 「どんなに難しい手術でも成功」「絶対安全」といった、医学的にありえない記載 |
データの根拠を明確にしない調査 | 「患者満足度99%」「治療成功率98%」と記載しているが、根拠となるデータが明示されていない |
著名人の来院実績 | 著名人の来院、治療実績は広告不可 |
症例前後の写真 | 症例前後の写真のみの掲載はNG
治療内容、治療期間、費用、リスク・副作用といった詳細な情報を記載する |
ホームページは広告可能規制が解除される
平成30年6月に医療法が改正され、現在はホームページも規制の対象となる広告になりました。そのため、ホームページに掲載できる内容は、前述の「広告可能な内容」で示した情報に限定されます。
しかし、次の2つの条件を両方とも満たせば、広告可能な内容以外の情報もホームページに掲載可能であると、医療広告ガイドラインに記載されています。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
自由診療に関しては、次の2つを含む4つの条件を全て満たせば、広告可能規制が解除されます。
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
- 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
しかし、広告規制が解除されたと言っても、どのような情報でもホームページに記載してよいということではありません。
広告規制が限定解除される例とその条件について解説します。
限定解除の例
限定解除の際によくホームページに掲載される自由診療の注意点を、次の表にまとめました。
限定が解除される例 | 詳細 |
自由診療 | 「提供している治療内容と治療に必要な標
準的な費用」「治療の主な副作用・リスク」を十分に記載する必要がある |
未承認医薬品等を用いた自由診療 | 自由診療の広告に必要となる通常の限定解除要件に加えて、未承認医薬品等の要件(他の同等医薬品等に関する国内承認の有無)も必要 |
医薬品等を承認された効能・効果と異なる目的で用いた自由診療 | 自由診療の広告に必要となる通常の限定解除要件に加えて、承認等された効能・効果または用法・用量とは異なることを明示する |
医療法による広告規制のまとめ
本稿では、医療法による広告規制について解説しました。
医院が広告を出す際は、掲載できる内容が医療法などによって定められており、ホームページでは限定的に解除されます。
医院の広告には、掲載できることと、できないことがあるため、チラシやホームページを作成する際は今回の記事を参考にしてみてください。
記事執筆 医療ライター 土光宜行